土曜日の朝、雪が降り続く中、カルロの葬儀がとり行われました。
カルロは退職するまでフェッラーラのアリオーステーア図書館に努めていました。
彼は退職記念パーティーを、自分のお気に入りの本屋さんで開いた程の本好きです。
彼は図書館に勤務中、色々な本にまつわる相談に、親身に答える名物図書館員でした。
また、フェッラーラ市の一地域、バルコ地区に図書館が無かったため、より多くの人に本に触れてもらおうと図書館建設に関わり、カルロによって作り上げられたバルコ地区の図書館は、今では多くの親子が通う憩いの場となっています。
自然を愛する山男で、彼の希望により、彼の亡骸は火葬に付され、彼の故郷、リッツァーノの山に帰ることになりました。
音楽も大好きで、良く、私達のコンサートにも足を運んでくれました。
そんなカルロに私とジャンルーカはドナドナの歌を捧げました。
ジャンルーカのギターで私は日本語でドナドナを歌いました。
ドナドナは、私が小学生の頃、日本では音楽の教科書にのっていました。この曲を知った時、呑気な小学生だった私は、かわいそうな子牛の歌なんだ、くらいにしか思っていませんでしたが、大きくなって、この曲はユダヤ人が、子供までを収容所に送還する、ナチスの行う非情行為への抗議の意味を込めた、溢れる悲しみが込められた神への祈りの曲だと知りました。
ドナドナは、この時代的な背景をもつことから、ヨーロッパでは反戦歌としても歌われることが度々あります。
ある晴れた昼下がり 市場へ続く道
荷馬車がゴトゴト子牛をのせて行く
何も知らない子牛さえ 売られてゆくのがわかるのだろうか
ドナドナドナ 子牛をのせて
ドナドナドナ はかない命
青い空 そよぐ風 明るく飛び交うつばめよ
それを見て 何を思う
もしも翼があったならば 楽しい牧場に帰れるものを
ドナドナドナ 悲しみたたえ
ドナドナドナ はかない命
“ドナ”は“アドナイ”が略されたもの、といわれていています。
“アドナイ”はユダヤ語で神に呼びかける時に使用する言葉です。
この曲のユダヤ語オリジナルタイトルは“ダナ ダナ”です。色々な翻訳経路をたどるうちに“ドナドナ”というタイトルに落ち着いたようです。
アドナイ、アドナイ、アドナイ 悲しみたたえ
アドナイ、アドナイ、アドナイ はかない命
カルロの笑顔を目に焼き付けて。