みなさん、“本の修復”という仕事をご存知ですか?
建築物から美術品、家具、家に至るまで修復という作業を抜きでは語れないイタリア文化。
美術品、建築物等に関しては日本からもイタリアに勉強にこられる方も多いですよね。
私は日本滞在中に一度も“本の修復”という経験をしなかったのですが、皆さんはどうでしょうか?
我らの友達、フランコはフェッラーラでは唯一の本、紙でできた作品(美術品も含む)を専門としている修復士です。
彼の仕事は主に、全国の図書館から依頼される所蔵本の修復、そして紙の作品、地図、絵画、ついたて…そして以外に多いのが一般の人が持ち込む本の修復です。
イタリアでは日本に比べて、まだ多くの人が本を購入する際に“本の製本”にこだわって吟味している機会を良く見かけるような気がします。きちんと背表紙があり、糸で製本がしてあり、良質の紙を使用した本を好んで購入する人がまだまだ多くいるようです。そして、購入した本を大事に大事に、時には修復をしたりしながら長い時間楽しむ、というスタイルも残っているようです。
そんなライフスタイルが日常に浸透しているからなのか、フランコの工房には多くの本が持ち込まれます。

順番を待つ本たち
そしてそれらのお客さんの持ち込む本の中には1900年代の本だけではなく1600年代の本等もたまに混じっていたりするのですよ!私物で!!

製本中のトゥーランドットの楽譜と、1600年代の薬学と占星術についての本

ありました!「狂えるオルランド」フェッラーラの作家、アリオストの名作です。
本を一ページ、一ページ解体しての再製本の作業から、古くなった背表紙を変える作業、そして虫食いにあったり、紛失してしまった部分を再生したり、汚れを取ったり…全て手作業による、技術と忍耐が必要な仕事のようです。
そして、以外だったのが、なんと、紙の紛失してしまった部分を再生するのには、和紙が必要不可欠だということです!彼は様々な種類の和紙を使い分け、器用に修復作業を進めていきます。
日本の文化がこのような場面でも生きているなんて誇り高いですね!

紛失してしまった部分を再生中。ちなみにのり付けに使用する筆も日本製がお気に入り。

こちらは特殊な液体で汚れを取り除き乾燥中

色々な種類の紙があります。そして棚の上にのっているものは‥…?
何やら見たことの無い器具を発見。これは何、フランコ?
折しもフェッラーラでは「修復見本市」なるものが開催されており、その会場で実演をするという情報をキャッチし、いってまいりました。
じゃーん!
本を製本する器具なのです。まるで機織りの作業を見ているようですよ。
上下に張った麻のひもに本の背になる部分をあて、ロウでしごいた糸を器用に結び編み込みながら仕上げます。

私も挑戦!
彼は後進の指導にもとても熱心で、ヴェネツィアの美術アカデミーでマスターコースを行ったり、彼の工房へ見習いにやってくる若者に丁寧に技術を伝授しています。
本の修復に興味のある方、また修復したい本をお持ちの方、ぜひフランコの工房へ相談に行ってみてくださね。

フランコ・アントリーニ
本・紙製品の修復工房、製本
Studio di restauro
libri e opere su carta
legatoria
Via Aldighieri 29/A
44100 Ferrara
Tel e Fax 0532 240421